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旭川地方裁判所 昭和42年(む)132号 決定 1967年5月13日

被疑者 近間重光

決  定 <被疑者氏名略>

右の者に対する殺人被疑事件について、昭和四二年五月一二日旭川簡易裁判所裁判官のなした勾留請求却下の裁判に対し、検察官から準抗告の申立があつたので、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

原裁判を取り消す。

理由

(準抗告の理由)

別紙申立書のとおり。

(当裁判所の判断)

旭川地方検察庁検察官が昭和四二年五月一二日本件被疑事件につき、本件被疑者の勾留を旭川簡易裁判所裁判官に請求したのに対し、同庁裁判官が「司法警察員より検察官に送致時間の制限に従うことができなかつたことにつき、やむを得ない事情があつたと認められない。」との理由で勾留請求を却下したことは記録上明らかである。

一件記録によれば本件被疑者は本件被疑事実につき昭和四二年五月九日熊本地方裁判所裁判官の発した逮捕状により同日午後一一時熊本県熊本北警察署に於て逮捕され、同月一二日午後一時三〇分検察官に送致する手続がなされ、旭川地方検察庁検察官が同日午後四時旭川簡易裁判所裁判官に対し、勾留請求をした事実が認められる。

ところで、刑事訴訟法第二〇三条によれば、司法警察員は被疑者を逮捕後四八時間以内にこれを検察官に送致しなければならないものであるところ、右事実によれば、被疑者は逮捕後四八時間を経過した後に検察官に送致されていることが明らかである。

然しながら、本件被疑者は、熊本市に於て逮捕され、犯罪地である旭川市に於て前記送致手続を受けているものであるが、司法警察員は逮捕後すみやかに被疑者を熊本市から旭川市に護送し、この間約五一時間を要したものであるが、これは現在の熊本-旭川間の交通事情によれば必要最小限度と認められる。さらに一件記録によれば、旭川警察署司法警察員は昭和四二年五月一二日午前二時三〇分本件被疑者が旭川警察署に到着後、本件被疑者に相当時間の休養を与えた後旭川警察署に於て被疑事実につき取調べをしたうえ、前記時刻に検察官に送致する手続をしたことが認められる。

然し、本件被疑者を逮捕後旭川警察署にこれが到着するまで約五一時間を要し、すでに刑事訴訟法第二〇三条の制限時間を超過したのであるが、その間なんらの取調をすることができなかつた本件の場合本件被疑者に相当の休養を与えた後右取調をし、その結果さらに右程度の時間を要したとしても、その遅滞はやむを得ない事由に基く正当なものであると解するのが相当である。

よつて、検察官の勾留請求を却下した原裁判は失当であつて、本件準抗告は理由があるから、刑事訴訟法第四三二条、第四二六条第二項に則り原裁判を取り消すこととして主文のとおり決定する。

(裁判官 平田孝 橘勝治 鷺岡康雄)

準抗告及び裁判の執行停止申立書<省略>

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